なぜセッション時間は伸びるのか?(2):補考。

前回のエントリで書き漏らしたケースや、アリアンロッド限定だったりメタプレイに関わってたりするケースを、少し書き足してみます。

  • 長考

ストーリーや状況判断、戦闘などでどうするべきか迷い、流れに乗り遅れたり進行を止めたりするようなケース。
前回も少し書いたように「謎や障害などの判断局面ごとに相応の所要時間を見積もる」のが、一つの解決策。また「なるべく悩まなくてもスムーズに進むよう、シナリオを単純化する」という手もアリ。
でもそれだけでは進歩もへったくれもないので、「プレイヤー側で訓練や経験を積み、様々な状況への対処法に慣れる」のがオススメです。
たとえば戦闘なら、自分だけではなくパーティー全員のデータをあらかじめ確認した上で「自分のキャラは何を優先して動くべきか?」「周りとの連携や役割分担は?」といった基本パターンや戦術を構築しておけば手早く処理できますし、余裕があれば「パターンが通じない敵に出会ったらどうすればいいか?」を話し合い、複数の戦術を用意しておくのも悪くないでしょう。

  • 戦闘バランス観やリソース配分の食い違い(MPやスキルを温存しすぎて途中苦戦など)

この項は、とりあえずアリアンロッド限定の話として書きます。
GMが《バッシュ》や攻撃呪文などのメジャーアクションスキル連打を前提にして戦闘回数や敵の硬さ・強さを設定しているのに、PC側は警戒して素殴り*1中心にプレイ。その結果、戦闘が予期せぬ長時間に及び、時にはPCの負傷や消耗が増えたりしてグダグダに……というのは、意外にありがちです。
似通った例としては、PCが《ホーリーウェポン》や《バーサーク》などの継続強化型スキルを重視することで戦闘が全般的に長期化したり、アコライトが《プロテクション》を使わずに《ヒール》を多用する場合。後者はプレイヤーの好みにもよりますが、《プロテクション》を積極的に使って自分のメジャーアクションを空け、支援や攻撃の機会に回した方がスマートだと思うんですよねえ。*2
逆も然りで、自分みたいな「戦闘少なめ・リソース惜しまず」の戦闘に慣れたPLが他の卓に参加して戦闘回数の多さやリソース倹約式の戦闘に戸惑う場合もあります。
こうした食い違いは、単にプレイヤーがシステムの特性やGMの癖・戦闘バランス傾向に慣れていないことで生じることもありますが、人によっては他のゲームで確立した自分のスタイルやバランス感覚が崩れるのを嫌うことが原因だったりもするので、微妙に厄介です。
アリアンロッドなまじシステムの自由度が高く懐が広いため、プレイヤーの遊び方によって方向性やバランスが激変することを強く意識しておく必要があります。要するに、同じシステム上でソードワールド的な戦闘(長期戦を想定した持続型強化スキル多用のCRPG的戦闘)もブレカナ的な戦闘(強力な一発スキルが飛び交うデッドリーで派手な戦闘)も再現できてしまうため、両者が同じ卓に混ざれば噛み合わなくて当然なのです。そこで、セッション開始前に参加者各自が「アリアンロッド以外でよく遊ぶ/好きなTRPG」を互いに教えあい、GMが今回のマスタリング傾向に最も近いシステムの名前を挙げると、それなりにギャップは埋まるんじゃないか?と思います。
セッション開始前に予定戦闘回数を公開し、ペース配分を促すというのも手です。FEARゲーにおける「クライマックスフェイズ」の宣言も、これと同根。リソースを出し惜しみしないで派手に活躍してほしいという意図ですね。これはこれで「道中ではケチりすぎて苦戦、ボス戦は楽勝で拍子抜け」になりがちですが、MPも「シナリオ1回限定」系のスキルも意外に余りやすい*3ので、慣れれば中盤でリソースを適度に放出して手早く戦闘を終えることも可能になります。

  • 強制イベントへの抵抗で時間を食う(メタプレイへの理解度により対処は異なる)

「護衛のため旅を共にしていたNPCヒロインが、道中でさらわれる」というような例。
PCにとって不本意・不利益な強制イベント的シーンをセッション中にやろうとすると、かなりの確率でそれを阻止しようと反発するPLが現れます。「無駄な抵抗」が延々と続いて話がグダグダになったり、GMが折れてしまったためにシナリオの予定が崩れて軌道修正に手間取ったり……と、「PCの(見せかけの)自由度」は多くの代償を必要とします。
この問題には参加者の性格や経験に応じて、まったく異なる2つの解決策があります。判断基準はメタプレイへの理解度(簡単に言えば、自分のPCの視点やその瞬間瞬間での感情・利害だけに縛られず、ストーリー全体を見渡した上で演出・行動できるかどうか)です。
前述のようなシチュエーションの場合、「ヒロインが攫われるのを阻止する」のはPCの立場から見れば理に叶った行動かもしれません。しかしGMが最初から「攫われたヒロインの救出」をハイライトに据えていた場合、大局的に見てPCの抵抗は本当に有益でしょうか? 仮にヒロインが攫われなかった場合、GMが別の展開やクライマックスシーンを用意しなければ、ストーリーは尻すぼみに終わってしまう可能性が高いでしょう。
「ぶっちゃけ」「お約束」「予定調和」に抵抗がなく、結果として面白いストーリーを作り上げることができればいい……というなら、今回予告等で事前にバラして協力を求めましょう。PLを味方につければ、NPCどころかPCが攫われるシーンだって余裕で演出できます。手前味噌ですが「オゼロンの魔術師」第2回オンセログの冒頭が好例で、ラーエル役のPLは「酔い潰れて隙を作る」ことを自ら演出し、セッションを盛り上げてくれました。
まったく逆に、PLがメタプレイに不慣れであるか毛嫌いしている場合は「強制イベント」を極力排除する(前掲のような状況なら、ヒロインが既に攫われたものとしてセッションを始めるなど)という手もありますが……個人的にはメタプレイに慣れた方が断然TRPGを楽しめると思いますね。

  • オンセ中に他のことをしている(TV視聴、ネット巡回など)

離れた場所にいる人間同士が「同じ卓」につけるのはオンセの大きな長所ですが、他の参加者の姿が見えないので「よそ見」しやすいという隙もあります。
基本的にはモラルとマナーの問題ですが、技術的に回避する手段も一応存在します。IRCの場合、「設定」→「キーワード設定」で特定の文字列に反応してBEEP音を鳴らし、IRCを前面に表示するように仕込んでおけば、なかなか返事がこない時に確認することができます。キーワードには、自分のキャラの名前や「次」「順番」など進行に関する単語を入れておくと良いでしょう。

*1:「すなぐり」と読む。MPやスキルを全く使わず、パッシヴダメージのみで勝負すること

*2:GMの戦闘バランスが厳しく、《プロテクション》と《ヒール》を両方使っても生き残るのが精一杯……という環境もありますが。個人的には、そういう戦闘ばっかりの卓はつまんないと思います

*3:実際、自分が経験したセッションでは内輪・外部を問わず、「波動砲」系の1発ダメージブーストスキルや《インタラプト》やギルドスキルなどが手付かずに終わる例も少なくありません