メイジのお仕事 〜「がんばれ砲台メイジ」編

はい、忘れた頃に考察スタートです。
先回りして書いときますが、筆者は別に補助特化メイジを目の仇にしてるわけじゃありません。その辺り、誤解なきよう。


アリアンロッドのメイジは不遇?

上級クラス到達前のメイジは「火力不足でアタッカーとしては貧弱」「《〜ウェポン》担当の支援キャラ」といった扱いを受けることが多く、メイジ不在のPTもちらほら見かけられます。その理由を挙げてみましょう。

  • 初期レベルでは武器攻撃のパッシヴダメージが相対的に強い
  • 同じく、初期レベルではMP不足で弾切れを起こしやすい
  • システム特性的にアコライトやシーフの必要度が高く、メイジは後回しにされやすい
  • 他のシステムの魔術師系キャラに比べて、冒険中に実行できるオプションの数が少ない

1〜2レベルのPTに対する難敵として、巷のGMはゴーレムやエレメンタルを好む傾向にあります。相手は物理装甲が圧倒的に硬く魔法に弱い、しかし呪文攻撃だけでは倒しきれずに息切れしてしまう……という状況では、たしかに戦士系に《ウェポン》をかけて殴り倒してもらうのが効率的ですね。
サポートクラスにアルケミストガンスリンガーを選択し、銃をダメージ源にするメイジ*1がオンセサイト・リプレイサイト等でそこそこ見られるのも、やはり前述の理由によるものと思われます。
ちなみにMP不足はメイジに限った話じゃなく、どちらかといえばプレイスタイルに起因しています。ギルドスキルで《祝福》を選び、メジャースキルを出し惜しみせずに押せ押せで進んでいけば、時間を浪費することなく楽勝でセッションを終えられたりするんですけどね。
「メイジ不在」は3人以下のPTで顕著。アコやシーフがメイジを経由して《ウェポン》だけ押さえる例も見られます。メイジはHPも防御力も低いので、まあ仕方ないのかも知れません。


また、「魔術師」というキャラに対するPLの役割意識や期待も、キャラメイクにバイアスをかけていると言えます。
具体的には「魔術師は知的な存在である」「戦士みたいに殴るだけ*2では物足りない」「補助魔法や非戦闘系の呪文も使いこなし、多芸に振舞いたい」といった風に。良くも悪くも、『ソードワールドRPG』のソーサラー*3に影響されているのかもしれません。


さらに。アリアンロッドはスキル制システムの中では「1回の成長におけるスキル取得数が比較的少ない割にキャラ性能への影響度が大きい」*4ため、同じスキル枠を消費する攻撃呪文と補助スキルはトレードオフの関係に陥りやすいです。
つまり、「補助スキルを増やせば増やすほど火力不足になりやすい」という素地に「低レベル環境では補助スキルが重視されやすい」という要因が重なることにより、メイジは思うように攻撃力を伸ばせないまま戦士系に差を広げられたり、あるいは最初からアタッカー役を放棄することになるのではないか?……と。
自分が使ったキャラの中では、フランベルジュがモロに「補助スキル傾倒型メイジ」でした。もっとも、予告で敵がゴーレムばかりだと分かっていたうえ、仲間全員が攻撃力を持っていたので《マジックブラスト》+《ファイアウェポン》が有効に使えると判断しての自発的選択。これはこれで非常に面白かったです。


◆それじゃ「砲台メイジ」の条件は?


……とはいえ。
公式リプレイのフェルシア(CL5で9d6+《マジックサークル》!という驚異的火力の持ち主)といい、うちのナイアといい、環境とPT編成によっては「砲台メイジ」を十分に活躍させることも可能なんですよね。
しかもナイアは攻撃特化していながら《ジャッジメント》を取る余裕があったし、フェルシアさんに至っては《ウェポン》2つにネタスキルの《マジックロック》まで押さえている!という遊びっぷり。*5
何が決め手になるのか、自分なりに分析してみました。

  • 初期レベルの段階で十分な火力を確保する

まずは比較対象から。物理攻撃の基本ダメージは[2d6+武器修正]で、さらに《バッシュ》が乗ります。戦士系が自分のCLに等しいペースで《バッシュ》を取得していくと仮定した場合*6、これに匹敵するダメージ量を魔法で再現するには呪文+パッシヴ強化*7の合計SLがCLよりも1つか2つ多い状態をキープする必要が出てきます。
つまり……砲台メイジを目指すなら、魔法攻撃のダイス数が常に自分のCLよりも2個以上多くなるようにスキルを取得する*8のが目安。低レベルでは意識的にアタッカー役を主張しないと、なかなか満たしにくい条件です。
武器の攻撃力分は「魔法ダメージ」による防御力低減効果で換算し*9、さらに《エキスパート》で補うことになります。とはいえ、初期レベルではMP的にもスキル枠的にも苦しいので、《エキスパート》を育てはじめるなら3〜4レベル辺りが勝負になるでしょう。
なお、メイジは属性マスターをフル活用すれば1レベルにつきダメージダイスを2個ずつ増やすことができます。火力特化した場合の育てやすさはサムライやガンスリンガーに匹敵するので、序盤はサポート役に徹して補助スキルを揃え、3〜4レベル辺りから一気に遅れを取り戻すという戦略も取れます。PT全体のスキル構成が防御重視に傾いていて攻撃力不足を感じるようなら、ぜひ試してみましょう。(こうした柔軟性もメイジの魅力だと思います)

  • 攻撃魔法は1種類に絞る

基本中の基本でありながら、他のシステムに慣れた人が違和感を抱きやすい部分。
アリアンロッドでは弱点狙いで複数の属性呪文を選ぶより、1種類の魔法を磨き込んだ方がダメージ効率は高いです。
相性の悪い敵に備えるなら、攻撃魔法と対になる属性の《ウェポン》を用意する(自分が《アースブレット》メインなら、魔法が効きにくい地属性のエネミーには《エアリアルウェポン》で対処するなど)のが有効ですね。

  • 思いきって《ウェポン》か《マジックブラスト》を放棄する

3レベル頃までの環境で火力アップを妨げる主要因が、この2つ。*10
前述した理由もあるので、あっさり《ウェポン》を切り捨てるのは難しいでしょう。《ウェポン》によるダメージ増加が有効/必須な環境(物理防御の硬い敵がやたらと出てくる卓)であれば取得すべきですし、逆にメイジの呪文攻撃が強ければ無理して取る必要はありません。特に《アースブレット》や《サモン・フェンリル》などバッドステータスで押し切る戦術を取っている場合は、《ウェポン》への依存度は低くなると思います。
さて本題。《マジックブラスト》は宝の持ち腐れになる確率が高いので、きっぱり無視するのも一計!です。CRPGなどで「メイジ=範囲攻撃担当」というイメージを持つ人も多いですが、ぶっちゃけスクエア戦闘では1マス1体しか敵が配置されないケースが多いので、それほど役に立ちません。むしろ《マジックブラスト》は《ウェポン》やアコライトスキルなど、味方支援スキルとの併用を考えた方が良いでしょう。
《マジックブラスト》前提の大群をぶつけるGMもいますが、その場合は《マジックブラスト》に《マジックフォージ》を重ねてザコを一網打尽、ボス戦の見せ場は前衛に譲る……という感じになると思います。
少なくとも、2〜3レベルで《ウェポン》と《マジックブラスト》を両方とも押さえると火力はガタ落ちするということで。どうしてもというなら、デフォルトで全体攻撃できるサモナーがオススメです。

  • セッション内外でアタッカー役をアピールし、役割分担を明確にする
  • 余計な役割には手を出さず、自分にできないことは仲間を信じて任せる

この二つは表裏一体ですね。尖ったアタッカーあるところ、優れた支援特化キャラあり。
逆に言えば、「殴りアコ」と「砲台メイジ」は同じPTに共存しにくいのかもしれません。
もちろん、全員がダメージソースを持つのも極端な役割分担も一長一短。結局は好みの問題になります。そのうえで、砲台メイジをやりたいなら早めにキャラを作って火力特化をアピールし、仲間に理解を求めた方がいい……ということ。

  • 「選択肢の少なさ」を肯定的に捉える

突き詰めると、アリアンロッドの砲台メイジは「セーラー戦士」みたいな存在です。他のシステムみたいに多彩な呪文を使いこなすわけじゃなく、1系統の攻撃魔法を愚直なまでに連発。前衛のように移動や回避を行う機会が少ないこともあって、単調に思えてしまうかもしれません。こうした要素への反発が、補助呪文重視のスキル選択やメイジ自体の敬遠につながっていると思います。
でも、いったん「ひたすら攻撃呪文を連打する」プレイスタイルを受け入れてしまえば、砲台メイジは非常に面白いです。バッドステータスが連携の起点になることは言うに及ばず、自由に攻撃目標を選べるのは「味方の物理攻撃と合わせて、どの敵から潰していくか?」という戦術的な要にもなります。前衛のポジショニングとメイジの目標選択、この二つが戦いの鍵を握ると言っても良いでしょう。
また、キャラ立てに限れば、スキルの少なさはロールプレイでも解決可能。「多彩な便利スキルを持っている」ことだけが魔術師としての存在感や有能さを示すとは限りません*11。補助系スキルも覚えるに越したことはありませんが、たとえ攻撃呪文しか持っていなくても「一芸に秀でた職人」や「魔術戦のエキスパート」として振舞えるし。
つまり「砲台メイジであることに自信を持つ」「キャラ立てや問題解決に際してスキルに頼りすぎない」ことで、実際に使うかどうか定かではない見栄スキル・盲腸スキルを減らして火力を高める……という手もあるわけです。単純明快な「強さ」によるキャラ立ても、そう捨てたものじゃないですよ(どんなに上手く演技しても、弱くて格好がつかない場合もあるし)。


改めて整理してみると、フェルシアの場合は「リプレイ1巻の時点からエイジと並んで攻撃力を前面に押し出したキャラとして振舞っている」「レベルアップのたびに、着実に火力を伸ばしている」「《マジックブラスト》を持っていない」「防御・回復はシグとアムに任せっきり(サモナーへ転職したのに《ガーディアン》を潔く切っている等)」という具合に、はっきりと自分の立ち位置を主張しています。それでいてボスにとどめを刺すことには固執せず、戦況に応じて厄介なザコに《マジックフォージ》を惜しまず投入するなど、判断力も光ります。
公式キャラと比べるのもおこがましいけど、ナイアもキャラ設定・戦い方・メタプレイなど様々な面でフェルシアをお手本にしてます。




例によって取り留めのない話になっちゃいましたが……この駄文を読んで、居直って砲台メイジを満喫してくれる人が少しでも増えてくれたら嬉しいです。

*1:長期的に見ると行き詰まりやすく、キャンペーンには不向き

*2:厳密に言えば「ダメージを与えるだけ」。なお実際の前衛キャラは「壁になって敵を止め、ダメージを受ける(それによってアコライトの活躍機会を作る)」のも重要な仕事だけど、やはり「能動的な役目は殴ることだけ」みたいなイメージを持たれやすい

*3:成長速度の遅さや消費精神力の制約により攻撃呪文の信頼性が比較的低め。その代わりレベルアップごとに多数の呪文を詰め合わせ的にゲットできるため、補助系・非戦闘系呪文に困らない

*4:『真ウィザードリィRPG』の場合、レベルアップごとに攻撃力アップや呪文獲得を行った上で、さらにオマケとして技能を選べる。『クトゥルフの呼び声』や『ルーンクエスト』なら、セッション中で使った技能すべてに対し成長チェックを行える。……etc

*5:フェルシアはライフパスで《始祖の紋章》を取っているのも大きいが、必須ではない

*6:便宜的にこれを標準値とします。実際、1レベルで《バッシュ》2を確保した戦士は恐ろしく強いし。

*7:エアリアルスラッシュ》+《ウィンドセイバー》等

*8:《バッシュ》同様、これも経験則による判断ですが。

*9:以前にも書きましたが、4〜5点程度のビハインドなら「20m以内の目標を好きに選べる」「バッドステータスが乗る」等のメリットで相殺。

*10:CL4以上にもなると、キャラの基本形が出来上がってスキル枠にも余裕が出るため、一気に火力を増強することも可能になります

*11:もちろん、スキルとPL本人の演技力が重なってPCの魅力が倍増するケースもあります。身近な例では「ホールデン」のシンが秀逸。