「想望のメモリアル」とミステリタッチ・シナリオ

やや遅くなりましたが、アリアンロッドリプレイ・ハートフル第2巻「想望のメモリアル」を読了。292〜293ページ辺りでいてもたってもいられなくなって”地下”へ飛び込んだら、既に同じことを考えてた人がいて吹きました。(※リンク先はネタバレ&成年向けです。注意!w)
それから、94ページのクリティカル演出が実に秀逸。こういうやりかたもあるのか!
「”不滅の諸公”スカディ」*1の登場によって、このシリーズは設定的にもアリアンロッド世界のメインストリームに食い込んできそうな感じ。続刊が楽しみです♪


以下、ネタバレ込みで感想を。巻末付録の「ミステリータッチ・シナリオの作り方」に関する話が多めです。


第1巻発売当時の紹介と似たような話になりますが、無印やルージュシリーズに比べると良くも悪くも「ゲームっぽさが目立つリプレイ」という印象です。
そう感じた理由は多分、「GMの口調が(戦闘時でも)丁寧で淡々としている」「PL発言がメタ寄りで、PCとしての理由付けを省略して行動に移っている場合が多い」からだと思います。*2
皆いい感じにキャラが立ってきてるけど、個人的には小暮英麻さん(カミュラ役PL)タイプの「どんな時でも他キャラ弄りに精を出す」タイプは苦手かも。。


でもって今日の本題、「ミステリータッチ・シナリオの作り方」に関して。
リプレイ本編を引き合いに出しながら解説していて、実用記事として秀逸だと思います。ただ、その本編が微妙にトリッキーなんですよね……。
同種のシナリオをやると仮定した場合、特にプレイヤーが引っ掛かりやすいと思ったのは、第4話の以下2項目。


1「マスターシーンを利用した倒叙形式でありながら、実行犯とは別に首謀者が存在して後から登場する」
2「容疑者リストの中に双子が存在する」


これが何故引っ掛かるかといえば、ミステリータッチ・シナリオでは情報や証拠を集めるだけでなく”推理”の要素……つまり「プレイヤーが”自分から見て辻褄の合う真相を想像する”」という過程も重視されるからです。
具体的に言えば、1では「プレイヤーがフィーネを追及することだけ考え、モーズレイを単なる情報提供者とみなしてスルーしてしまう」恐れが。また、2では「プレイヤーが勝手に”双子の入れ替わりトリック”を意識してしまい、話を無駄にややこしくする」可能性があるかも……と思いました。
要するに、プレイヤーの先入観や見落としによって、GMの提示した情報が意図通りに活用されないケースがありうるわけですね。
逆に言えば、コロンボ形式でシナリオを始めたにも関わらず、途中の情報収集でモーズレイの怪しさに気付いて”黒幕”を看破したプレイヤー陣の柔軟さは凄いと思います。


でも、こうしたハマりに対する方策は、既に付録で明記されているものがそのまま適用できるんですよね。杞憂だったらごめんなさい(笑)。
リプレイ本編から離れると、ミステリータッチ・シナリオの失敗でありがちなのはGMが”謎”の部分に傾倒しすぎて、プレイヤーから見ればストーリーの整合性や因果関係が歪になってしまう」ケースです。小説でも時々ありますよね、トリックの奇抜さを最優先したあまり物語としての流れが破綻してる奴。そういうのはプレイヤー側としては”話の流れを推理できない”ので、難易度も跳ね上がるわけです。
なので、シナリオ作成時は

  1. まず犯人側の動機・目的と犯行手段・過程を明確に設定して、客観的に納得できるような話の流れを組み立てる
  2. そのうえで、「どの部分をプレイヤーに隠すか」を考え、話の要素を分解して情報に変換
  3. さらに、ゲーム進行に伴ってPLが入手した情報を元にどんな推理を行うか、最低限でもいいから頭の中でシミュレートする

……というような作業を行えば、精度が上がるんじゃないかなあ?と思います。


ちなみに、うちのオンセでよくやってるような「セッション途中でPLが提案した”真相”をGMが取り入れてシナリオを改変する」という手もありますが、これはまた別の話ということで。

*1:これは固有名詞出しただけじゃネタバレにはならないと想うので、特に伏せません。

*2:NPCの不審な行動はミスディレクションっぽいからスルー、とか。