ロールプレイの道標

地下墳墓の住人さんの記事「各キャラクターの行動原理」に触発されて、つれづれと。


PCを演じるうえで自分が重要だと思うのは、以下の4要素です。

  1. 「本質」:PC自身の性格、行動原理。また、それらを形成した過去の設定情報
  2. 「役割」:パーティー*1内で強調される自分のキャラ特性、立ち位置、役割分担。
  3. 「物語」:シナリオ内の設定、話の流れ等、いわゆる「話の都合」。
  4. 「変化」:物語や他のPCとの関わりを通じた、成長・性格変化。事前に設定することも可能

1の「本質」はロールプレイの基礎となり骨格となる要素。この部分をカッチリと設定することも大事ですが、セッション全体で見れば重要度は比較的低い……というか寧ろ、こだわりすぎると害になる場合もあります。
よくあるのは「自キャラの暴走や他人との衝突を上手く収拾できない」*2か「話に絡むことができない」ケースですが、両極端なように見えてどちらも「自分のキャラの性格や設定に固執するあまり、周りと話を合わせることができない」ことに起因しています。
そこで、この項目は一旦棚上げして、外堀から埋めてみましょう。


2の「役割」を視野に入れるかどうかは、TRPGを遊ぶうえで最も重要です。特に、「キャラが被っていないかどうか?」を意識するだけで大違いですね。
たとえば、既にボケ役が1〜2人いるパーティーでボケに走っても霞んでしまうかツッコミ不在で収拾がつかなくなるのは目に見えています。暴走役と抑え役にも同じことが言えるでしょう*3
また、プレイヤーの向き不向き(主役キャラが得意な人、縁の下から支えるタイプの人など)によって各キャラの立ち位置が決まることも多いですが、その場合は比較的何でもこなせるタイプのPLが「既存のキャラと被るのを避け、不足している役目を埋める」とスムーズに話を動かせるようになります。PCデータの作成でメイジだらけになったりシーフが足りなくなるのを避けるのと同じ理屈ですね。
たとえば……自分が「寡黙なキャラ」を設定したはずなのに、自キャラにスポットライトが当たっている場面以外でも恒常的に口数が多くなってしまう場合*4。その原因は「他のPLやPCも口数が少なく、自分が喋らなければ話が進みにくいから」だったりしませんか? もしそうなら、「寡黙なキャラ」という自分の設定を曲げてでも、能弁キャラとして振舞った方が有益だと思います。
この考えを推し進めていくと、キャラメイクの段階で性格配置を考え、キャラが被らないように・なおかつ他のPCと密接に関われるように設定するのが上策ということになります。時には、自分が最初にやりたかったキャラを諦めて作り直すようなケースも出てくるでしょうが、噛み合わずに消化不良なセッションになるのと、果たしてどちらが良いでしょうか?


3の「物語」は「変化」とも絡むので、とりあえず「状況やストーリー展開に合わせて臨機応変に」という程度で。(※→翌日のエントリで少々補足しました)


4の「変化」は、変わり映えのしない衝突シチュエーションが延々繰り返されるのを避けるために有効。ささいなことで口論ばかりしていた二人が、精神的成長によって一方が折れたり互いを認め合うようになったり、衝突の中身も本気ばかりではなく軽口の叩きあいになったり……など。「ツンデレ」という流行語が脳裏をよぎった人も少なくないでしょうが(笑)、あれはモロにTRPG向きな要素だと思います。
のみならず、キャンペーンでは最初から「長期的な性格の変化・成長」を組み込んでPCを設定し、テーマ意識をもって演じるという遊び方もオススメです。「弱気な戦士が仲間に支えられて成長し、聖騎士として仲間を護れる存在になる」とか、「バーサーカーが戦いを離れて農場で暮らし、一時は腑抜けたかに見えるも”護るべき者”を得て新たな強さに目覚める」とか、「復讐鬼が仇討ちを果たして自らの存在意義を見失い、新たな目的を見出すまで苦悩する」とか、「無感情だった元暗殺者が愛情に包まれて人間性を獲得していく」とかいう具合に*5。もちろん、既存のキャラに途中から「変化」を組み込んでいくのもアリですね。こうすることで、GMから与えられるミッションを追うだけではなく自発的にドラマを生み出せるようになるし、「自キャラの設定情報(過去設定や関係者NPC)をセッションで拾ってもらえない」という理由だけで地蔵化するような事態も避けられます。


ここで1に戻りますが、たとえば一口に「寡黙なキャラ」と言っても内訳は様々です。「気が弱い」「秘密主義」というように自己完結している場合もあれば、「周りの意見を尊重するため、率先して発言することが少ない」というように「役割」的な視点から口数を減らす場合もあるでしょう。セッションが始まってから調整できる場合もあればそうでない場合もあるので、キャラメイクの時に他のPLと話し合って大まかな立ち位置を決めておくのが無難だと思います。
また、どんなに緻密で膨大な「設定情報≒過去」を用意しても、それが「現在の自分」の性格や行動原理を意味づけるものでなければ、TRPGの設定としては難があります。たとえGMにまったく拾ってもらえなかったとしても、PCの性格や行動に説得力を与える形で活用できるような設定がベターですね。
たとえば、AというPCにとってかけがえのないBというNPCが設定されているとします。Bはシナリオにも他のPCにも無関係で、セッション自体にも登場しません。この場合、「過去におけるB氏との交流や氏の言葉・生き様がAにも影響を与え、A自身の言動や振る舞いによって再現される」ように演じれば、他の参加者も共有できる「生きた設定」へと化けることでしょう。




結局のところ、「自分のキャラだけ見てないで、周りと上手く協調しながら遊ぼう」というベタな話でしたとさ。メデタシゴンベエ

*1:ここでは「セッションに参加しているPC集団」という意味。適宜、他の用語に呼び替えて下さい

*2:衝突・対立のシチュエーション自体は問題なし。当事者がメタ視点に立ち、落としどころを準備しておくことが望まれる

*3:蓋を開けるまで他のPCの性格が掴めなくて、予定してたポジションを取られたりすることもあるけどねー(苦笑)。

*4:ただ単に「PLが饒舌で、黙っていられない」という場合は除きます。この場合でもPLとPCの発言を分けることで一応対処可能ですが

*5:手前味噌ですが、いずれも実例アリ。知ってる人は「あぁ、あのキャラのことだな」と笑ってやって下さい。バーサーカーの例は最後まで演じきれなかったかな?