「楽しみ方」のパラダイムシフト

またもや『ひぐらし』ネタで恐縮ですが(専用ページはこちら)、今回は割とシリアスな話を。


『ひぐらしのなく頃に解 皆殺し編』07th Expansion
(from:魔王14歳の幸福な電波さん)


この記事を読んで非常に納得。しかし裏を返せば、読者でありプレイヤーである我々の側にとっても耳の痛い話だなあと思いました。要は「受け手の側が先入観や固定観念に囚われて”従来と同じ楽しみ方”だけを求めようとする限り、どんなに斬新で魅力的な作品にも真価を見せることなくスポイルされてしまう危険性がつきまとう*1ということですから。
ひぐらしく頃に』にも様々な欠点はありますが、それ以上にコンセプトの伝達失敗が大きく響いてますね……。いかに上手く伝えるかという発信者の努力も重要だけれど、受け手の側にも「提案に沿う形で遊ぶことにより、新しい楽しさを見出そうとする」柔軟な姿勢は必要だと思います。


我田引水的なこじつけになってしまって失礼しますが、これはTRPG界隈から見ても決して対岸の火事ではないと思います。予め決められた配役やストーリーラインを基に「話を膨らませていく」という物語創造的なゲーム性が理解されずに「やらせ」呼ばわりされたり、PCの死亡率が低い演出重視の戦闘が「ヌルい八百長」扱いされたり。もちろん旧来的なプレイスタイルやバランス感覚が”間違っている”わけじゃないけれど、自分の馴染んできた楽しみ方だけが”正しい”と思い込んで他のスタイルを卑下するのは避けたいところですね。


対戦格闘ゲームの草分けになったストIIも、黎明期は「アーケードゲームは1人で長時間粘って遊ぶもの」という固定観念に阻まれて対人戦が普及せず、稼動から半年過ぎたあたりで漸く対戦が盛り上がりはじめました。ブーム以降はプレイスタイルが完全に逆転し、1人プレイ派の方が肩身が狭くなっちゃいましたが(苦笑)。余談ながら、音ゲーの「実力相応の難易度を選べば、初心者も上級者もプレイ時間がほぼ等しくなる」という方法論は格ゲーに匹敵するパラダイムシフトだったと思いますが、これも一般プレイヤーへ浸透するまでには時間がかかりました。格ゲーの場合はプレイヤーごとに筐体を分離した対戦台の普及、音ゲーの場合はシステムと難易度の調整・1プレイの低価格化といった売り手側の努力が大きな効果をあげていますね。
ノベルゲームもTRPGもまだまだ「型にハマった思考」に囚われている人が多く、この先どんな風に発展していくのかは断言できませんが……発信者の惜しまぬ努力によって”新しい”スタイルが少しずつ多くの人に理解され、受け入れられていくことを願っています。

*1:特に、既成ジャンルから派生した”似て非なるモノ”に、その傾向が強い