シーン制RPGと旅とエタメロと。

遅蒔きながら2ch卓上ゲーム板の◆■◆シーン制シナリオの作り方◆■◆スレ(過去ログ)を読んでいたら、気になる話題が2つほどありました。
一つはアルシャードの「王女救出シナリオ」における「不寝番」問題。これはシナリオの予定調和とプレイヤーの”自由度”に関わる話ですね。長くなりそうなので今は割愛、いずれ改めて別項(「一本道シナリオ」についての雑感。)で言及します。

もう一つは「シーン制で”旅”を表現できるのか?」という話題。
D&Dにおけるヘクスマップやワンダリング判定のように”道中”を表現処理するルールが無いシーン制RPGでは、旅の長さを”体感”するのは難しいのではないか?……というニュアンスの議題だったのですが。
結論から言えば、シーン制システムは「省略と編集」によって成り立っているわけで。
スレの中で某氏が発言していたように、旅の途中で体験した印象的なシーンをピックアップして描写することで「旅情」を表現できれば、それで充分ではないか?と思いました。

で……実はここからが本題。
「旅の表現」に関する論議を読んでいたら、ふと思い出したのが『エターナルメロディ』(以下エタメロ)というギャルゲーの存在。ジャンル的には恋愛育成アドベンチャーとして知られているけど、これがモロにシーン制RPGそのまんまな構造をしているんですよ。

まずは基本的な旅のシーン。
ワールドマップが存在しないにも関わらず、道中の訓練画面で旅路の長さを、そして途中途中のバイトやデートイベントで印象的な想い出となる場面を、それぞれ上手く表現しています。「点」(イベント)と「線」(道中)の繋ぎ方や省略は、シーン制RPGと根本的に同じ技法です。

また、エタメロの売りであるスゴロク式ダンジョンでは、「シーン制シナリオ」そのまんまな構成と演出が際立っています。

  1. オープニングフェイズ:ダンジョンの入り口で主人公パーティーとライバル達の掛け合い。ここで何をすべきか目的が明示・確認される。
  2. ミドルフェイズ:ライバルパーティーと追いつ追われつ、スゴロク形式でダンジョンを進んでいく。要所要所で分岐や強制停止が発生し、戦闘や小イベントに。
  3. クライマックスフェイズ:ゴール間際でボスキャラと対決!
  4. エンディングフェイズ:どのパーティーが最初にゴールへ到着したかにより、ミッションの成否が決定。今回の冒険の顛末と、次の冒険の目的地が示される。そして旅の画面へ。

……という具合。
ダンジョンマップがスゴロク盤という抽象的極まりない形であるにも関わらず、冒険の起承転結をシーンで切り取って効果的に表現しているため、3Dポリゴンの迷宮に勝るとも劣らない「冒険の臨場感とスリルと興奮」が生まれている!というわけです。
エタメロが旅路(=空間)を抽象化したのに対し、同じスタッフが制作した『ウィザーズハーモニー』と『悠久幻想曲』は、「学園生活」や「ホームタウンで過ごす日々」という時間を抽象化しつつ様々な冒険や人間模様を織り込むことに成功しています。
いずれの作品も少々古くなってしまって入手困難かもしれませんが、見掛けたら是非手にとって遊んでみて下さいな。

ちなみに『ロマサガ』のマップ移動も、省略によって旅の雰囲気を演出している好例ですね。実際に歩いている場面を延々描写しなくても、旅を描くことは充分可能……ということで。